江戸更紗の歴史
更紗が日本に伝えられたのは、室町から桃山時代、あの南蛮美術華やかなりし頃といわれている。それが、やがて型紙摺りという手法を得て、日本独特の美しい更紗に変わったのが「江戸更紗」である。 江戸更紗は異国情緒を漂わせながら、しかも深い渋みのある味わいを持ち、日本の風土と独特の美意識をとり、発展して来た。 それを可能にしたのが型紙摺りの技法であり、この美の世界を支えているのは、江戸の昔から今日まで連綿と続いて来た職人達の技である。 江戸更紗は、その美しい色模様の中に熟練した職人たちの技が息づいている。
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1.図案 更紗染は、昔から伝えられた文様を「たくみ」に取り入れ、そこに現代感覚を加えながら、斬新な柄を生み出して行く。 |
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2.型彫り 図案が決まると、その図案を分解し色彩、文様に合わせて型紙を彫っていく。手すき和紙を何枚も重ね、渋柿で固めた地紙にたった一本の小刀で全ての文様をほり込んで行く。 |
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3.更紗の下染め しぶき汁などを生地に引き染めして、更紗独特の深い渋みを出すためである。 |
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4.色合せ 更紗師の思いえがた色に従って染液を調合して行く工程である。色の創造こそ江戸更紗の真髄であり重要な工程の一つである。 |
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5.刷毛 摺りの工程の中で、職人達の最も気を使うのが刷毛である。摺り職人達は、夫々自分の手に馴染んだ鹿毛で作った丸刷毛を使う。丸刷毛は、云わば摺り師達の命なのである。 |
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6.糸目摺り 糸目とは文様の輪郭、そして原型である。細く糸を引いたように見える事からその名が生まれた。この糸目摺りは、一色ながら四枚以上の型紙を使う。摺りの基本となるだけに一ミリのズレも許されない最も熟練を要する摺りの工程である。 |
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7.目色摺り 糸目が終わると目色の摺りに入る。目色とは、柄の彩色のことである。型紙を模様(糸目)に合わせ、染料を染み込ませた丸刷毛を前後左右と同じ力、同じ速度で摺って行く。 |
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8.地型摺り 地色とは模様の背景となる部分を云う。一色に四枚程度の型紙を、むらなく摺り合わせて行かなくてはならない。この工程は、職人達の経験と、その技が最も要求される作業である。 |
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9.蒸し 蒸熱箱に生地を入れ、摺り終えた染液を生地に蒸着・発色させる、刀の焼き入れに例えられ、温度そして時間に気を使わなければならない。 |
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10.水洗 蒸しの終わった生地を水にさらし、余分な染液を洗い落とし乾燥させて、全工程は終わる。
出典:東京都染色工業共同組合
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